会長挨拶

脳血管内治療のすすめ

脳血管内治療は、医師、コメディカル、行政、企業など多くの人々の協調により、その安全性と有効性を飛躍的に高めました。現在、脳卒中の予防と治療に必須のものとなり、その重要性は今後も増していくでしょう。そのためすべての脳卒中治療医に、この治療法を学ぶことを強く勧めます。

脳血管内治療のアドバンテージは、内科治療より直接的に血行再建が可能で、外科治療より低侵襲であることです。またすべての手技は類似しており、また単純であるため習得が容易です。さらに企業が多くを投資し新しい機器や材料を開発しているため、進歩が早くかつ今後もそれが継続すると思われます。

脳血管内治療の黎明期には、主な対象疾患は動静脈シャントで、神経放射線科医が治療法を確立しました。離脱型コイルの開発により脳動脈瘤が治療対象になると、日本では脳外科医がその包括的な患者ケアの能力を生かし、これを発展させました。2010年血栓回収機器の日本導入後は、脳梗塞急性期治療も対象となり、今後脳卒中内科医のさらなる参入を期待しています。

脳血管内治療は誰が施行すべきかという問題があります。神経放射線科医か、脳外科医か、脳卒中内科医か?脳血管内治療に専従する脳外科医か、開頭治療も行う脳外科医(二刀流)か?脳血管内治療は、血管造影手技を基本として、その難易度には序列があります。容易なものから、CAS、急性再開通、破裂および未破裂脳動脈瘤、硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形、脊髄動静脈シャントの順序ではないかと思います。難易度や合併症の許容度より、その序列のうち破裂急性期脳動脈瘤までは一定のトレーニングを受ければ誰でも治療すべきだと思います。むしろ急性期病院における速やかな治療が良好な転帰に結びつきます。一方、未破裂脳動脈瘤以降は、きわめて低い合併症率と難しい手技が必要で、脳神経外科学のみではなく神経放射線学も学び、これに専従する医師が治療にあたるべきではないかと思います。

脳卒中治療に従事するすべての医師に、脳血管内治療をすすめます。自分は何を目指すのか、それにはどうすれば良いのか、本会でヒントを見つけてください。一人でも多くの方の参加を期待します。

2014年5月

第30回NPO法人日本脳神経血管内治療学会学術総会
会長 松丸祐司
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
脳神経血管内治療科 部長